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映画感想「ウィズダム・ペイシェント」(ルーマニア

清原和博を主演に抜擢したこの映画は父子家庭におけるすれ違いと繋がり、ガスタンクを持ち上げる清原など、北欧作品らしい淡々とした叙情性に溢れているのだが、ときおりアイキャッチ的に挿入される清原が金髪美女と物理学及び生物学者が見たらアメイジングと必ず呟くであろう体位で性交しつつ「元木、元木」とドルビーサウンドの限界に挑戦する絶叫を放つシーンの有用性が曖昧である点が作品の統合性を乱している気がしてならない。或いはそれは「これは映画だ」とラストシーンで宣告するが如く、叙情は金髪女性の喘ぎとも股割り時における力士の悶絶ともとれる声と、最高級の音響装置を用いてようが必ず音割れする落雷のような清原の絶叫に打ち消されるさざなみでしかない、と主張したかったのだろうか。視聴者の映画と現実という遠近感に脳震盪を起こす、そういった意味ではなるほどと頷かざるを得ない。特別出演女優として、日本から蒼井そらが抜擢されていたが、「アロハには、こんにちは、さようなら、君が好きですって意味があるんだよ」と父と口論をして外人特有のものの聞かなさで家を飛び出し川原で佇む子どもと、明らかにビニールでできた服と鉄の貞操帯といったいでたちで並び、子どもとアロハ、アロハ、と言い合ううちに日が暮れるシーンなどは感動を呼ぶものだったが、直後のシーンで清原にロメロクラッチに似た体位で性交され生音で関節が外れる音がしたのはさすがに目を背けざるを得なかった。子どもが病にかかり、「必ずホームランを打つ だからお前も頑張るんだ」と野球があまり普及していないであろうルーマニアにおいて高らかに宣言し、サッカーグラウンドで楽しく遊んでいた少年たちをダイヤのピアス、スキンヘッド、裏社会とのつながり、プライド参戦の準備があるといった言葉で恫喝し、PKを要求、キッカーとキーパーの間に立ち、蹴りこまれたシュートを勃起した黒バットでロンドンまで飛ばすラストシーンは圧巻の一言であった。エンドロールではNG集が流れるのだが、ほぼ全てガスタンクを女性器に挿入しようとする清原、ショタもええかもしれん、とスタッフチェアで呟く清原、出演者以外の女性を犯そうとして街をあげて制止される清原など、清原ファン必見の内容であった。左耳のピアスをおもむろに外し、子ども役の少年に握り締めさせ、これが運をシバきあげるんや がんばれよ、というカットで幕がおりたこの映画に、私は総体として楽しむべき快作であるとの評価を下したい。渡した清原と、渡された少年の目は優しく、背景ではガスタンクが演出ではなく爆発していた。