はるの/よるの/ようだ

昔の光が胸に映る。ディスプレイはあれから幾つ替わっただろうか。何処へ向かうでもなく、しかし何処か確かに目指すところがある、守るものもある、少し、そう、少し変化した、打鍵する音は変わらない、その目的は、生産により多くを奪われることになったが、生産の視点から見れば、非生産に蹂躙されていた時間を奪還したとも云える、この二項対立は適切ではない、俺は生きている、その平熱が生むものは、打鍵の音と同じく、何も変わらない。流れている位置が、少し変わっただけ。俺には守るものが出来た。打鍵の音は、彼らをどこまで運んでいくのだろう。
六年前、もし誰かと俺が、誰かは異性として、閲覧者と管理人として、密やかで穏やかで少し疼く交流をしていたら。変わらないメールアドレスから、いま、会いませんか、と連絡が来たら。
彼らはどこへ運ばれていくのだろう。俺はどこへ流れていくのだろう。
ずっと日記を読んでいてくれた六年前のきみよ。どうか、さらばとは言わないで欲しい。まだ格好良く終わらせたくはない。
きみに恋していたい。
昔の光が胸に映る。光るディスプレイ、響く打鍵の向こう、流れる水の音、耳に残る声は、悪いことはみんな忘れたあとの、むかしのひかり。
遮断機の音が聞こえる。俺には守るものが出来た。さらばとは、言わないで。